摂食・嚥下障害のリハビリテーションとは

日本摂食嚥下リハビリテーション学会ジョイデンタルクリニックの歯科医師、歯科衛生士は日本摂食嚥下リハビリテーション学会などの学会や勉強会に定期的に参加しています
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会に参加しました。
日本摂食嚥下リハビリテーション学会学術大会

何らかの原因で食べることができなくなったり、食べる機能が低下した方へリハビリテーション(間接訓練と直接訓練)をおこない、機能回復または維持することです。
安全にお口から摂取できるように段階に応じての評価、アセスメントが必要となります。

準備  専門的な口腔ケア

歯科医師または衛生士による専門的な口腔ケアを週1回でも行うことで、高齢者の誤嚥性肺炎の発症率を低下させると言われています。
また口腔ケア前と口腔ケア後では、味覚(味を感じる)の変化があり、ケア後の方が味覚を感じやすくなると報告が出ています。
これらの事から、口腔ケアは口腔リハビリを行う前準備として必須になります。
口腔ケアを行う際には、歯ブラシや粘膜の清掃のためのスポンジブラシなどで衛生的にすることが重要です。

間接訓練と直接訓練

口腔のリハビリテーションには間接訓練(食べ物を使わずに行う訓練)と直接訓練(食べ物を使い行う訓練)があります。

間接訓練
間接訓練では直接訓練への準備期であり、間接訓練の進み具合を診ながら、診断、評価し、摂食・嚥下機能の維持、またリラクゼーション効果もあります。個々の患者様の目的、集点を合わせた訓練を組み合わせしマネージメントをしていきます。
口輪筋マッサージ(唇、お口の周り筋肉) 唇や頬が固くて開口不十分の場合や開口(お口が閉じない)場合、それが原因で口腔乾燥症や唾液がダラダラ口から流れ出てしまう場合等おこないます。
口腔内に指を巻き込んで内側に伸ばしたり、口輪筋を指ですぼめたりします。
このようなマッサージを行う事により刺激で唾液の分泌を促します。唾液分泌を良くすることで、自浄作用が増し、嚥下訓練はもちろんの事、その他では歯周病の予防や虫歯の予防、インフルエンザなどの感染症予防にも効果があります。
筋群の運動訓練  少しは自分で舌や口唇を動かせるが、可動域が少ない場合の訓練で、能動運動(自分で動かせれる)と抵抗運動(他から加えられる運動)に分けられます。
感覚受容の訓練アイス棒マッサージ(冷圧刺激法) 凍らせたアイス棒やスプーンを使い口腔内を刺激する訓練です。

関連運動

呼吸、発声、構音、咳嗽訓練等があります。
呼吸と嚥下には密接な関係にあります。飲み込むときには一瞬呼吸が止まるので喉頭閉鎖します。嚥下直後に呼吸は再開します。
この様に協調しタイミングよい呼吸と喉頭閉鎖機能は誤嚥防止には重要です。
・直接訓練 直接訓練とは実際に食べ物を用いて行う訓練で、直接食べることで咀嚼機能を高めていきます。
直接訓練の開始基準は、病態の安定や、咳反射があり、意識レベルが清明か覚醒(JCS 0~Ⅰ桁)等あり、かつVEなどの検査によって評価され、安全に食べられると判断された患者さんに限られます。
VE等の検査により食事形態の変化や工夫がなされたものを嚥下代償法と言います。
また嚥下食の形態を段階的に上げていく事を段階的摂食訓練と呼びます。

1) 段階的摂食訓練 直接訓練は数種類の代償法を用いながら、嚥下段階表の食事の形態指標を用いて飲み込みやすいゼリーから摂取する事から始めていきます。訓練経過により食べられるものを一口量や形態をステップアップさせていき、栄養面で摂取が現実的となるところまで食形態をアップすることができれば訓練としてではなく、栄養摂取としての経口摂取が可能となります。

2)嚥下代償法 *リクライニング 気管が前、食道が後ろにあることから、口から直接気管内に食べ物が入るのを防ぐ目的で リクライニングをさせます。この際、首が上下に向き過ぎたりせず、枕やタオルなどを入れます。
またVE、頸部聴診法などにより、個人にあった誤嚥しない角度を検査によって決めていきます。

*頸部部前屈
*.頸部回旋側 患側の咽頭腔が狭められ、健側のみを食塊が通るようになります。
直接 訓練開始時点で用いる代償法です。
うなずき嚥下 飲み込みに合わせて下を向くように声掛けなどで嚥下させる方法です。
咽頭残留が多い場合などに試すとよい。まれに自然とこのような動きが出ている場合が多くあります 一側嚥下 頸部回旋だけでは正確でない場合や、口腔の後方へ送り込み不良と咽頭通過の左右差が同時に見られる場合に用います。
複数回嚥下・交互嚥下 口腔内や咽頭部に食残留があり、また残留の感覚が乏しい場合に複数回嚥下をするように指示します。
反復嚥下ともいいます。そして、咽頭残留をとろみのお茶やゼリーなどで飲み込んでもらう。
食形態の違うものを声掛けし飲み込んでもらい咽頭残留を除去する場合は交互嚥下といいます。
嚥下後の発声・咳 誤嚥の危険性が高く、更に不顕性誤嚥が疑われる場合に用います。嚥下後に発声させて湿性嗄声(がらがら声)が認められる場合には咳払いを促します。
嚥下補助床=PAP・PLP(舌接触補助床、軟口蓋拳上装置) 入れ歯みたいな形をしています。
PAPは、舌の動きが不十分で、舌と口蓋が接触しない場合に用います。
入れ歯のような装置の床(上あごの部分)を普 通の入れ歯よりも厚くすることで舌の口蓋への接触を補助し構音や嚥下機能を代償する装置です。
PLPは軟口蓋の挙上が不十分で鼻腔閉鎖が乏しい方に対して用いられる装置です。構音時、嚥下時の鼻咽腔の閉鎖を図ります。